すごろくや

ゲームマーケットの朝って、気持ちいい

執筆:古田楓

ボードゲームのイベントが好きだ。

展示をしますとか、同人即売会ですとか、中古品セールをしますとか。「今日は友達とディプロマシーで友情を溶かすんだ」とか、「滑り込みで入ったこのマーダーミステリー、前からやってみたかったんだよね」とか、そういうやつも好き。とにかくボードゲームに関する、何らかの予定が入っているとすっごくワクワクするし、ちょっとだけ早起きをしたりもする。

でもまあ、そこそこにボードゲームを楽しんでいる我々にとって、日本において足を運びやすい中で、一番大きなイベントはゲームマーケットなんじゃないのかなあ。

あの空間って、ちょっとだけ特別だ。

ゲームマーケットの朝は、早い。

さて、早起きがこの世で22番目くらいに苦手な自分だが、ゲームマーケットの日の朝は結構悪くない。苦手だけどそれでも、「なんかいいな」って思えちゃう朝なのだ。

有明付近、いや、せめて新橋くらいに泊まろうかと、何度考えたことか。じゃらんを検索し、楽天トラベルを眺め、ネットカフェとまで睨めっこまでした。あくまで自分の場合だが、ゲームマーケットの朝は基本的に3時半起きだ。3時半に起きて電車に揺られるくらいなら、前日に泊まり込みをしてしまおう、というリッチな考えである。さすがにリッチすぎて、考えるだけで絶対やらない。一泊するくらいならボドゲを買う予算に回すのだ。

ゆっくり睡眠を取れない場合も多く、「あっれー!? 明日がもうゲムマなの!?」と深夜に気付くこともしばしばある。だいたい、Twitterでゲムマの新作チェックをしていて思うんだけど。

3時半。まあ、すっごい眠い。めっちゃ眠い。おはようございます、とTwitterで言う。ゲムマです、ちゃんと起きれました、といったアピールをしておくのだ。なんか知らないけど、大体この時間まで寝てないフォロワーとかが返事をくれる。Twitter、恐ろしい場所だ……。みんなちゃんと寝てくれ……。

さて、普段は朝食を食べない自分だが、これから向かう場所は戦場だ。もちろん、ちゃんとお昼休憩もあるが、昼食を食べている暇があったら会場を見て回りたい。それが世の常、ゲムマの常。朝に少しでもカロリーを入れ、血糖値を上げることに闘志を燃やす。ここで食べるのは大体大したものじゃなく、カロリーメイトとか、inゼリーとか、とにかくエネルギー特化型の食品だ。この前の2021秋ではベッドから起き上がれず、ラムネという名の白い錠剤をひたすら食べていた。家を出る前からゲムマである。

マーキング済みの会場マップPDFが、きちんとスマホに入っていることを確認したら家を出る。あと事前にピックアップしたサークルさんや商品の、予約番号なんかもまとめておかねば。前日までにちゃんとやっておけ、という痛い指摘はやめてほしい。予約して満足する悪い癖、みんなやめような……。

ちなみに余裕がある時は、予約品ごとにお金を封筒にまとめておくとよい。ブースごとに買うもの、予約番号と、金額を書いておいて、ブースで封筒渡すだけ。これを事前にやっておくと、限られた会場での時間を最大限有効に活用できるし、サークルさんとのやり取りがスムーズなのでおすすめをしておく。限られた時間の中で、効率よくゲムマを回るためのライフハックである。なおこんなことをしても、会場で「やっぱりこっちもほしい!」と言って財布も出してしまうのが、同人即売会の醍醐味だ。

大慌てで支度をして電車に飛び乗る。イヤホンを耳に差し込んで、「​​On the Board」を流しながら、めちゃくちゃ浮かれるまでがセットだ。あんまりピンとこない人に補足をしておくと、アニメ「放課後さいころ倶楽部」のエンディングテーマ曲である。なんかちょっとボドゲ感が出る……気がする。ボードゲーム漫画としても、音楽でボードゲームへのモチベーションを上げてくれるという点でも、とっても優秀な放課後さいころ倶楽部さんだ。サブスクにあるのでみんな聴いてみよう。

とまあ大体この辺りで、多くのTwitterのフォロワーが起床を始める。「今日はゲームマーケットだー!」と意気込むフォロワーもいれば、泣く泣く野暮用でお留守番といった人もいる。この辺りでお気付きの方もいるかもしれないが、自称・すごろくやで最もTwitterが好きな人間だ。愛すべきTwitterの話はまたどこかで。

りんかい線やゆりかもめに乗るあたりで、前日ちゃんと寝なかったことを後悔し始める。コンタクトを入れてるせいで、寝たらカッピカピになって大変なことになるとわかっているのに、睡魔との戦いに負けそうになる。本番はもうちょっと先だというのに。

そんなこんなで会場最寄り駅に着くのが、エリア設営開始時間の15分前くらい。おおよそ、7時だ。

2021春、よく見ると電光掲示板表示が早朝であるとお分かり頂けるだろうか

東京での開催は春先と秋口なので、どっちも肌寒い季節。ちょっと薄暗さの残るカラッとした早朝に、吸い込む空気がとても気持ちいい。

そう、ここだ。

会場最寄りに、到着した瞬間だ。

今のうちにとコンビニでおにぎりを買い、

ATMで10千円と入力する瞬間。

続々と会場に向かっている報告が流れるTwitter。

会場周辺で見知った顔の他出展者さんとのご挨拶。

今から開場待ちですと、早朝から並ぶ一般参加の友人とする会話。

冷える空気の中で、コンビニで買ったおにぎりを頬張りながら、

同じブースのメンバーに「おはようございます、よろしくね」って言うこと。

これが一番、好きだ。

2020秋にて。コロナ禍で久しぶりのゲムマは、秋晴れでした

これからゲームマーケットが始まるんだなって、一番ワクワクする瞬間だ。それぞれ目的も、ゲームの好みも違うが、「ボードゲーム」というひとつの共通点によって集まった人々が一堂に会す。いつもよく一緒に遊んでいる人ともゲムマで会うと新鮮だし、地方からはるばる来てくれた普段なかなか遊べない友人と会えるのも嬉しい。

同人のゲームが好きだとか、商業用の中古を探しにとか、会場限定のあれが絶対欲しいとか、友達がいるからとか、なんやかんや理由を付けて、みんなゲムマにやってくる。

ああ、もうすぐ、みんなに会えるんだな。

いつものあの人に、久しぶりのあの人に。

そして、新しいゲームに。

有明で吸い込むあの空気が、自分にとって、ゲームマーケットの始まりの合図だ。

入場後のすごろくやでは、怒涛の設営を行い…


こーーーんなブースができあがる。
今まで書いてきた内容に比べると、大変あっさりと書いてしまったが、設営こそが本当の正念場なのだ。3時起きのせいでこのあたりからハイになっており、割と記憶がない。開場ギリギリまで調整を行っているので、気づいたら「ゲームマーケット、開幕です!」の挨拶が起きて拍手をしている、なんてことも。

ここからの時間は一足飛びで過ぎ去っていくわけで、2日間があっという間だ。このあっという間の時間に向けて、どこかで誰かが今日も、ボードゲームのことを考えている。

かなり大忙しで目まぐるしいこのゲームマーケットというイベントだが、とんでもない早起きから始まる非日常感が、やっぱり大好きなのかもしれない。

2021秋のゲームマーケットも、本当にお疲れ様でした!!お客さんが戻っていて、とっても活気があって「ゲームマーケットだ〜〜〜!!」という気分でワクワクしっぱなし。財布の中は空っぽになって、はじめて二日目の朝にATMに寄りました。予算とは一体なんだったのか。

それでは、次のゲームマーケットでお会いしましょう!!

この記事を書いた人:フルタ

2018年入社。イベント・動画配信担当スタッフ。最後の晩餐で遊びたいゲームは「ブラフ」で、この世が終わるならとことん騙して気持ちよく終わりたいとすら思うブラフゲー好き。本文中にも散々書いたが、朝から晩までTwitterに生息しているツイ廃。見つけてもそっとしておいてあげてください。ちなみに「記事を書いてみた展」の企画・編集を担当。