すごろくや

『かたろーぐ』ロゴが生まれるまで

執筆:春山敬

はじめまして。すごろくやの制作担当の春山です。先日、仕事で使っていた古いスケッチブックを見返していたところ、当時制作していた『かたろーぐ』のロゴスケッチが出てきました。今回はそれらの資料をもとに、「『かたろーぐ』ロゴが生まれるまで」をテーマとして、その誕生秘話と制作過程を振り返ってみたいと思います。

『かたろーぐ』とは?

『かたろーぐ』というゲームについてはこちらをご覧ください。

すごろくや:『かたろーぐ』紹介記事

もともとは、福井にお住まいの「ちゃがちゃがゲームズ」さんが自費出版されていたオリジナルゲーム『かたろーぐ』(以下「旧版」)がありました。当時すでに高い評価を得ていたこのゲームの素晴らしさを、より広く知らしめ大勢の方に楽しんで頂くために、全国的に流通させる商業出版として改良を加えたものが、すごろくや版『かたろーぐ』です。私はプロダクトデザインの担当として、パッケージから内容物まで一通りのリニューアルを手掛けることになりました。

開発:第1夜

まず、スケッチブックに残っていたロゴの断片がこちら。 この時点では、まだ商品名が「かたろーぐ」「カタローグ」「語ろーぐ」など定まっていなかったようです。刷新する際に、旧版と差別化しテーマがより伝わりやすい名称にできないかという点で、いろいろな表記を試していました。

見た目の印象も、旧版がクラフトボックスにラベルを貼った手作り感や温かみを重視したデザインに対して、すごろくや版では親しみやすさは残しつつも、より商業的なわかりやすさやポップさを加えて、ひと目で刷新されたものだとわかるようにしたいと考えました。

  • 右上:親しみすさとポップさを強調してみる
  • 右下:文字装飾を施し、クラシカルな知的さを加味してみる
  • 左下:「語」の口の部分をフキダシにし、テーマである「対話」をイメージさせる

この手描きスケッチは、ロゴとして完成させるというよりも、頭の中に浮かぶイメージやアイデアを整理するような作業です。頭だけでなく手を動かすことで生まれるような感触や雰囲気、また制限のない中で閃いたアイデアの断片は、この後に生かされていったりします。

開発:第2夜

続いて手描きスケッチをもとに、Adobe Illustratorでデータ化してみます。色でイメージが左右されないように、まずは黒1色で作成することが多いです。 データ化してみると、手描きではわからなかった全体のボリュームやバランス、サイズ感や密度がよくわかります。ここでわかったのは、

  • 「漢字+かな」は硬く重い印象。また視認性も悪い
  • A案は柔らかすぎて知的さが感じられない
  • E案の装飾は、やや過剰すぎる

当てはまりそうなフォントが思いつく場合は、手描きを省略していきなりフォントから検討することもあります。例えばF案は「親しみ」や「手書き」から想定したフォントをそのまま当てはめてみたパターンですが、実際に並べてみるとロゴタイプとしては安易で、やや味わいに欠けるものになりました。

開発:第3夜

打ち合わせを経て「漢字+かな」の組み合わせはボツとし、ひとまず「カナ+かな」で進行することになりました。 着色することで、より明るく楽しげな、この商品に合った配色を探っています。

  • G-1、G-2:「ぐ」でフキダシのアイデアを採用
  • H:より柔らかく優しいイメージ
  • I:ハンドメイドな印象を強調するため手描き風の塗り

J、K案はこれまでと方向性も異なり、印象も尖りすぎているのでおそらく採用はされないものの、制作中に閃いた案をあえて残しています。これは幅広い方向性を探る意図もありますが、今後の別企画のアイデアストックになるかも、という習作でもあります。

開発:第4夜

デザインがだいぶ煮詰まってきたので、前述のG案をベースに「かな+かな」「かな+カナ」で改めてブラッシュアップ。これは「フロップデザイン」さんの「みつごもじ・じじょ」というフォントをベースに細部やバランスを改変しています。 ポップで親しみやすく、文字として視認性も高いシルエットに、当初からのアイデアであった「フキダシ」や「文字装飾」も残しています。また配色は過剰になりすぎないように、明るい色合いでの配色案も数パターン作成してみました。

開発:第5夜

ところで、中国の古い言葉に「三上さんじょう」というものがあります。これはアイデアがひらめく状況として「馬上・枕上・厠上」がある、つまり「移動中・就寝中・おトイレ中」にひらめきがち、という意味の言葉だそうです。

要はひらめきは得てして机に向かっている最中ではなく、ふとした瞬間に降りてくるという例え話ですが、ボクは20代の頃にこの言葉を知り、また実体験としても「そういうことって確かにある」と実感していたので、それ以来、なにかを考える際のテクニックとして積極的にこの言葉を意識しました。またひらめきの下準備として、短時間で集中的にアイデアを考えて考えて考えまくった上で、パッと考えることを止めて意図的にしばらく放っておくと、実際に思いがけないタイミングでちゃんとアイデアが降ってきたりします。

さて、今回の『かたろーぐ』ロゴ制作も大詰め。下準備はほぼできたので、あとの仕上げは「閃き待ち」です。意外なタイミングで、きっといいロゴが生まれてくるに違いありません。

開発:最終夜

こうして(?)『かたろーぐ』ロゴは無事生まれました。現在も好評発売中ですので、是非お買い求めください。

この記事を書いた人:春山

2016年入社。制作担当スタッフ。人生で衝撃を受けたゲームは「お菓子の魔女」。箱をそのままゲームに生かすのかと、驚きを隠せなかった。他にも「ストーンヘンジと太陽」のように天井を使うなど、通常では考えられないコンポーネントのゲームにはワクワクする。