わたしのおすすめゲームリストMy Favorite Gamelist

吉川肇子セレクト

私の好きなゲーム

【プロフィール】吉川肇子(きっかわとしこ):慶應義塾大学商学部教授。専門は組織心理学、社会心理学

すごろくや取り扱い中のセレクト品

パンデミック
キャンバス
ディクシット
ゲームリスト

すごろくや取り扱い外のセレクト品

カルテット
ひつじパニック

1.カルテット(Quartett。別名Go Fish, Happy Families, Authors)

1番好きなゲームで、日本一のコレクターだという自信があります(他の人は集めていないであろうという意味です)。同じカテゴリーの4枚のカードを集めればよいので、トランプでもできるゲームです。通常36枚から40枚で遊びます(4枚×9カテゴリー、または4枚×10カテゴリー)。
自分に必要なカードをもっていそうな人を指名して、そのカードを持っているかどうかを聞いていくので、神経衰弱のようなゲームですが、カードが人から人へと移動するので、勝利するためには、「プレーヤの名前をきちんと覚えること」と「誰が何をほしいといっていたか注意深く聞いて覚えておくこと」が重要になります。
このゲームは非常に教育的なゲームだと考えているのですが、重要な点は2点で、1つは上に挙げた「人の話をよく聞く」ことの重要性が学べるという点、もう1つは、トランプではできない点ですが、コンテンツを変えれば、それについて勉強ができる、という点です。
たとえば、私の持っているユニセフのカルテットには、「教育」「医療」「衛生の確保」など、ジャンル別にユニセフの活動が4つずつ紹介されており、ユニセフが何をしているか学ぶことができます。
自作もしやすいので、勉強したことをカードにして、自分たちで遊びながら復習することもできます。
カルテットはドイツを中心に、大抵の国で販売されていますが、フランスは、「sept familles」という同じルールのゲームの方が多く販売され、遊ばれています(7カテゴリー(家族)、6枚を集めます)。実は日本でも戦前くらいまで「家族合わせ」という名前でカードが販売され、遊ばれていました。

2. ひつじパニック(Haste Bock?)

一言でいえば、4人将棋でしょうか?フェイズごとにルールが変わるのと、フィギュアがとてつもなくかわいく、1番遊びたいゲームの1つです。特にフェイズがかわるごとにひつじの群れの向きが変わるのが大変に楽しい点です。ただ、プレイ人数の制限が厳しく、ちょうどよい人数が集まらないので、なかなか遊ぶ機会がありません。
その後アメリカ版で「Sheer panic」として、出版されましたが、元のZoch版の方がボードのデザインなど魅力があります。ただ、現在はどちらも入手不可能なようで残念です(Amazonにはありますが、高額で販売されています)。

3. キャンバス(CANVAS)

カードのイラストの綺麗さに惹かれて全種類買っています。私の好きな絵本作家(アーティスト)のブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari)の作品に、透明なシートに書かれた絵を重ねる(PIU E MENO / PLUS AND MINUS)知育玩具があるのですが、それと非常に似ていて、そしてイラストが素敵なゲームになっているので飛びつきました。

4.ディクシット(Dixit)

ゲームの潮流を変えたゲームという点で挙げました。私はドイツで開催されているエッセンに2003年から参加していますが、当時はまったくドイツ語だらけで、出展されているものも時間のかかるゲームが多かったと思います(HabaとSelectaのものを除く)。このゲームが登場した後、コミュニケーションに焦点を当てたゲームが次々でてきたという印象があります。また、フランスのゲーム会社の台頭もこれがきっかけだったと思います。エッセンの印象ががらりと変わりました。
私は、コミュニケーションを研究テーマにしているので、他者の考えていることを推測するゲームがでてきたのはありがたいですし、自分も大変好きで、ここで挙げようか迷った「Concept」や「Symbolen 」(Sag’s mit Symbolen。これは古い)なども、自分で遊ぶだけでなく、研究や授業で使ったりしています。

5.パンデミック(Pandemic)

これも「協力ゲーム」という潮流を作った、という理由で挙げました。もちろん、協力ゲームは以前から細々とありましたが、このゲームが与えた影響は大きかったと思います。この後、たくさんの協力ゲームが生まれました。パンデミック自体も、Dixit同様、次々と新しいバージョンが生まれていることを考えると、いかにこのゲームが世界中で人気を得たかがわかると思います。
個人的には、パンデミックダイスが、1番現実に近いと思いますが、現在は入手不可能なようで残念です。残念ついでに、日本の感染症の研究者の先生方がCOVID-19の前にこのゲームをプレイされていたら、もっと日本の対策もより良いものになっていたと考えています。このように、ゲームと現実をよくつなげている、という点でも、このゲームを評価しています。ゲームには、「楽しい」だけではなく、「ゲームでの体験を、現実と結びつけて世界を変えることにつなげていく」という重要な役割があると思いますが、これはそれの典型的な例だと考えています。